「CCES(Center for the study of Complex EconomicSystems)」
西村和雄京都大学経済研究所教授を研究リーダーとする研究プロジェクト「複雑系としての非線形経済システム:理論と応用」が文部省によるCOE形成プロジェクトの対象として選ばれたことに伴い、「複雑系経済システム研究拠点(CCES)」が京都大学経済研究所に設置され、1997年から、この5年間の研究プロジェクトに関する活動を行っている。

 
複雑系とは、多くの要素が集団でネットワークを形成し、個々の要素間のフィードバックを通じて、相互に関連し合いながら運動する非線形動学システムであり、物理、生物、社会、経済現象を通じて普遍的に存在することが、最近になってようやく認識されるようになった。そのようなシステムにおいては、一般に、自己組織化、分岐による構造変化、新しい特性の創発、階層化パターンの形成など多くの共通 する構造が認められており、よく知られるカタストロフィーやカオスと呼ばれる構造もそれらに含まれる。特に生物、社会、経済システムにおいては、認知、学習、遺伝を通 じての個々の要素の変化が、システム全体の適応と進化を駆動するという現象がしばしば観察される。複雑系は、数学的には非線形動学モデルにより記述され、その体系的な研 究はごく最近はじまったばかりであるが、個々の学問領域を越えた共通の基盤を形成 されるものと期待されている。
政治経済を含む世界システムの一大変革期にある21世紀を目前にして、経済学は、大きな変革を迫られている。この要請に応えるべく、近年、「新しい成長理論」、「新しい国際経済理論」、「新しい地域経済理論」、「新しいゲーム理論」等々、経済学の様々な分野で精力的に「新しい」研究が模索されているが、本研究の目的は、非線形・複雑系モデル分析という統一的な観点から、理論と実証を通じて「新しい経済分析」の構築に、総合的に貢献することにある。より具体的には、経済システムをダイナミックな複雑系とみなし、
(1)マクロ経済システムの変動と構造変化の理論、
(2)国際地域経済システムの形成と発展の理論
(3)人間行動と組織の適応進化についてのゲーム理論、および
(4)それらの計量経済分析、
を相互に関連づけながら複雑系経済システムの構造を解明することが本研究のねらいである。